本の感想をあげることはほとんどない。でも、この本は久しぶりにとても衝撃的で、読み終わった後もしばらく頭から離れない。
主人公を取り巻く登場人物それぞれの思いと罪。人に必要とされたいという主人公の思いがどうしてこんなにかなわないのか。どうしてみんな彼女をこれほどまでに傷つけるのか。
多分、読む人の多くが「彼女を守ってあげたい」「自分なら彼女を裏切ったりしないのに」と憤りを感じるのではないだろうか。
後半になるにつれ、物語の緊張感はどんどん加速していく。
最後の方は間に合うのか、間に合わないのか、どうか間に合わせてくれと願いながらページを繰る手が止まらない。
(ここからネタバレ)
そして最後に到達したときの絶望感。
解説では、「この小説を『救いがない』とは読まなかった」とある。
しかし無垢な主人公が自分の信じた人たちからことごとく裏切られ、自分は誰からも必要とされていない人間なのだという結論にたどり着き、死ぬことを強烈に願う。
人のために自分の気持ちを犠牲にし、自分というものを持たなかった少女が、死ぬために初めて力を、気持ちを奮い立たせて生きるのだ。感動的だと言うが、死ぬことが救いであり、死にたいためにはじめて生きようとする姿に救いはあるのだろうか。それが救いだとしたら、彼女が生きてきた世界は、この世は、本当に救いがない世界なのだと思う。
確かに暗い、救いがないといった一言で終わる物語ではない。
人間の愚かさや汚さ、良心や正義、冤罪とは、死刑とは。
とにかくいろいろなことを考えさせられる。
頭がぐるぐる回って、でも、多くのものが力でねじ伏せられ、歪められているこの世界は実際、救いがないのかもしれないな、などと思ったりもした。

「整形シンデレラ」とよばれた確定死刑囚、田中幸乃。その女が犯した最大の罪は、何だ?
殺されたのは三人だった。幸乃の元恋人だった男の妻とまだ一歳の双子の姉妹。なぜあの夜、火は放たれたのか? たったひとり幸乃の無実を信じ、最後まで味方であり続けようとする男。なぜ彼は、幸乃を信じることができるのか? すべてを知らされたときあなたは、真実を受け入れることができるだろうか? 衝撃指数極大値。圧倒的長編。
殺されたのは三人だった。幸乃の元恋人だった男の妻とまだ一歳の双子の姉妹。なぜあの夜、火は放たれたのか? たったひとり幸乃の無実を信じ、最後まで味方であり続けようとする男。なぜ彼は、幸乃を信じることができるのか? すべてを知らされたときあなたは、真実を受け入れることができるだろうか? 衝撃指数極大値。圧倒的長編。
©早見和真/新潮社
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カスタマーレビュー
5つ星のうち4.1
4.1/5
989 件のグローバル評価
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ドラマ放送の第4話を視たところで結末を知りたいという欲求を抑えきれず、原作を読みました。冒頭でいきなり結末が描かれ、少し戸惑いました。最初に結末を持ってきて、フィルムを逆回しにするように話が展開してゆきます。心閉ざす主人公・幸乃が、虐待を受けて育ったからこういう人間に育ちました的な、ステレオタイプの人物像は、やや食傷気味です。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2023年5月4日に日本でレビュー済み
主人公の田中幸乃は、放火犯として、死刑を宣告される。そんな裁判所の風景から物語が始まる。
さまざまな場所、さまざまな時代で田中幸乃に関わった人々が語るその姿は、冒頭の田中幸乃像を覆していく。
「全然違うかもしれないのにね」
彼女に関わる人物が終章で呟く。
物語は、処刑代に向けて、階段を一歩ずつあがるように進む。
抗いがたいその流れに、読者として救いを求めつつ、それでも静かにその時を待つ田中幸乃に惹かれていく。
彼女が最後に示したものは、恐怖や抵抗ではなく、死へ向かう意志だ。そこに強い生を見る。
明るい物語ではないけれど、暗いとも違う。救われないけれど、救いがないとも違う。
読後、その言葉を探しながら、ひとりで余韻に浸る。
さまざまな場所、さまざまな時代で田中幸乃に関わった人々が語るその姿は、冒頭の田中幸乃像を覆していく。
「全然違うかもしれないのにね」
彼女に関わる人物が終章で呟く。
物語は、処刑代に向けて、階段を一歩ずつあがるように進む。
抗いがたいその流れに、読者として救いを求めつつ、それでも静かにその時を待つ田中幸乃に惹かれていく。
彼女が最後に示したものは、恐怖や抵抗ではなく、死へ向かう意志だ。そこに強い生を見る。
明るい物語ではないけれど、暗いとも違う。救われないけれど、救いがないとも違う。
読後、その言葉を探しながら、ひとりで余韻に浸る。